北海の砂島より

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Evil Bank Manager雑感


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大航海時代くらいを舞台にした銀行経済シミュがしたい、人が死ぬようなやつ」――ちょうど見ていた映画の影響を受けてそんなことを漠然と考えていた矢先、steamのおすすめに浮上してきたこのゲーム。無職ゆえにここ半年ほどsteamは勿論のこと、amazonや定額制配信サービスに至るまでとにかく出費を抑えてきた私が、ギッチギチに堅い財布の紐を緩めてまで購入しました。お値段、なんと1220円……驚くなかれ、これが今の私にとっては大金なのです(真顔)

まあそういった経緯からして、よほどこのゲームが私の琴線に触れたのだろうということは察していただけるかと思います。てなわけで「Evil Bank Managerちょっぴり気になってる」という本邦の同好の志に向けて、期待値カンスト状態でダウンロード&数時間プレイしてみた感想をつらつらと書いていこうかと。

まず、まさかの日本語対応。発売当初から無料で日本語訳がついてる洋ゲーの貴重さは語るに及ばず。おそらく零細規模である本ゲームの開発が、今や洋ゲー界隈ではオワコンの日本語までカバーしてくれているのはひとえに感謝しかない。この時点で割と評価高めです。
ただまあ、肝心の翻訳の内容は文字コードのせいか文字化けしてるだの誤訳だらけで日本語の体をなしてないだの、酷すぎるの一言に尽きるのですが……。幸い、開発者はsteamコミュを巡回しているらしく様々な声に応えて頻繁にアップデートしています。今後の改善に期待できるでしょう。私は邦訳に辟易して英語でプレイしてたら慣れてしまい、そのまま英語でプレイしています。よって本記事も英語版準拠です。

では本題、ゲームそのものについての感想。総評から言ってしまえば1220円相当ならこんなものだろう、と同時に価格以上の面白さも感じるといった辺りでしょうか。
Evil Bank Manager、大まかにどういうゲームなのかを説明すると「1500年頃の旧大陸世界で銀行を経営していくゲーム」なんですが、現状20のAIライバル銀行とプレイヤー銀行が互いにしのぎを削り合っていく……ってことには一応なっています。が、市場の奪い合いなど経済面でドンパチやれるゲームではないというのが一つ残念なポイント。純粋な本格派経済シミュというより、「銀行視点から世界を動かしていくターン制ストラテジー」と表現した方がいいのかなあと思います。
主たるゲームの流れとしては、貸し付けや投資で資産を増やしていく至極普通の銀行経営かと思いきや、まず勝利条件に資産が問われていません。つまり、倒産さえしなければ資産ランキングで最下位のままでも別に構わないのです。ゲームとしての勝利が目的ならば。

ここで勝利条件をさらりとご紹介しておきますね。
・300ターン経過する
連邦準備制度を確立する
IMFの株式を51%保有する

要するに300ターン銀行を存続させつつ、スキルツリー形式の様々な要求を満たして連邦準備制度を完成させるか、数十ターンごとにオークション形式で競売されるIMFの株式を見事買い取って51%以上のシェアを誇るか、どちらかになります。
実プレイでは連邦準備制度を完成させた時点でVICTORYとポップアップが出たので、素直に300ターン銀行経営するだけでも勝利にはなるんでしょうか。
IMF国際通貨基金って時代的にはまだまだ先の話では?という野暮ったいツッコミはさておいても、どうでしょう。銀行を存続させることはさほど難しいものではありません。「納品クエスト」的な"連邦準備制度"クエストラインをこなすか、ほぼ運任せのIMF株式オークションに大金をつぎ込むか…いずれにせよ、統計上での銀行資産額に一喜一憂する理由がなく、資金を惜しまず投資に回せるのです。これは銀行経営シミュとしては割と斬新というか、資産が全て!という訳ではないのがかなり個人的に好評価ポイント。まあしかし実際問題として勝利条件を満たすには多額の資金が必要になってくるので、近からず遠からず資産が全て!でもあるんですが。

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↑150ターン目くらいまではTotal Valueでダントツ1位だったけど、勝利条件に気づいて
からなりふり構わず投資してきた結果10位に転落した図。

ちなみに勝利条件のうち連邦準備制度はこんな感じ。

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スキルツリーみたいに分岐してますが最終的には全部取得しなければなりません。内容は大きく分けて
①Espionage(意味はスパイ活動だけどゲーム内では外交、ロビー活動に近い)で使用するInfluenceポイントが大量に要求されるもの
②借金取り立ての際、または貴族や他行への"ゆすり"として使用するFearポイントが大量に要求されるもの
③資金のほかシルバー・サファイア・ルビーといった貴金属が大量に要求されるもの
の三種類となっています。
まず①と②ですが、これはターン毎に一定量ずつ増えていくポイントを要求されるので常日頃から節約して溜めていかなければなりません。幸い、本社で雇えるManager(アマチュア/プロ/専門家の3レベルからなる顧問のこと、各分野ごとに最大9人)の合計能力によって得られるポイントは大幅に増加します。ただしManagerはガチャ形式で選ぶほかないため苦手な人は「えぇ…?」と思うだろうし、時として多額の出費を強いられるのが玉に瑕。そもそもInfluenceもFearも連邦準備制度以外のれっきとした使い道が存在するので、中々そこら辺のマネジメントが難しい。
そして③、Gold(原子番号79の元素としての金ではなく単にマネー、資産)は普通にプレイしてればそれなりに賄えますが…シルバー・サファイア・ルビーは投資による物件からの現物収入が雀の涙レベルなので、集めようと思うと市場から必要量を購入するか(←非常に高くつく)Fearポイントを使って貴族からせしめる以外ありません。初見プレイでは「サファイア?ラッキー高く売れる!」など嬉々として貴金属を現金に換えてしまうので、よほど意識して集めていかないと連邦準備制度完成は無理です。いわば初見殺し要素かもしれません。

さて、ならばもう一方の勝利条件のIMFはどうなのか?

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はっきり申し上げてこれも初見殺しです。まず約20ターン毎に、全体のシェア数%分のIMF株式がオークションにかけられます(謎、追記:ダッチオークションというらしい)。各銀行は自分が支払うことのできる範囲の最安値で株式を買い取ろうとチキンレースを展開するのですが、時計回りに針が動いていくにつれ落札価格も下がっていき、一番最初に「Buy」と名乗りを挙げた銀行が購入できる早い者勝ちシステムは、初見では何がなんだか分かりませんでした。
このシステムになんとなく察しがついたのはオークション3回目か4回目を迎えた時でしたね……針の動きが早すぎてあっという間に競売が終わってしまうのも大きいし、何よりチュートリアルが不親切すぎる。これでは2時間未満のプレイで返品続出しても文句言えないでしょう。ちなみにIMF株式は一度入手さえしてしまえば以降失う要素はないみたいです。セーブ&ロード地獄のポテンシャルを秘めるIMFオークションよ……。

なんだか最初のゲーム評価の話から脱線して勝利条件の説明に移行してしまいましたが、詳しいゲームシステムに関してはsteamコミュに有志の方の日本語初心者マニュアルがあるのでそちらも参照されたし。

疲れてきたので以降はこのゲームの好評価ポイントと不満点を列挙していきます。
<好評価ポイント>
・権謀術数から武器商売まで、あらゆる手を使って銀行の拡大に寄与できる。
・武器商人ロールでお気に入りの国を軍事大国に育て上げられる。
・国家間の戦争に支援者として肩入れ可能。基本的に戦争は資金力(武器の数)で決まるのでどんな小国でも最大限に援助すれば勝てる。
・ある国で自分の銀行を展開させるには"開国させる"必要があるが、大国であればあるほど開国費用は高くつくので、周辺の小国を開国させて影響力を及ぼし、標的の大国と戦端を開かせたうえで大量の武器を送りつけるなどして領土を拡大させる手法も有効。
・他行への攻撃手段としてFearを使っての資産破壊や、他行に多額の融資を行い債務不履行で破産に追い込むなどがある。
・一応市場が存在し、物価の価格変動予想に基づいて売り時買い時を悩むのも一興。
・なかなかBGMがイイ。
・動作も軽く、ダウンロード容量は1GB未満。
・サクサクとsteam実績を解除できる。
・おそらくPCの設定タイムゾーンに合わせて、メニュー画面の背景が朝昼夕晩と変化する。
<不満点>
・1500年から16世紀中葉くらいまでプレイできるのに、新大陸がない。
旧大陸といえど、アフリカは西はマグレブ東はエチオピア、それより南は対象外。アジアも同様にマラッカより南はマップから外されています。植民要素はないわけ?
・AI補正を疑うレベルで、資産額や銀行が展開している国家数で大差をつけられる。プレイヤーに甘々なはずの難易度ビギナーでも……どうやら頻繁なアップデートの割にバランス調整がまったくなされていない模様。
・このゲームの戦争システムでは、「負けたら相手に割譲する」地域を攻撃側と防衛側両者ともに定めているので、基本的に自分の銀行が展開している国が戦争に突入したら否が応でも支援しないとならない。
・戦時中の国からは不動産収入や物件の現物収入が一切得られなくなる。リスク分散のため様々な国に投資していかなければならないのだが、投資先の国家同士が戦争を始めると本来得られるはずの収入が停滞して大惨事になる。
・AI銀行が束になってプレイヤーの敵対勢力に資金援助をするため、理不尽に近いレベルの絶望的な孤軍奮闘を強いられる。これはゲームプレイ的に良きスパイスになってる反面、かなりストレスも感じる。
・基本的に毎ターンやることは各画面を確認して毎ターン同じところをクリックしていくだけなので飽きる。「スマホゲームが好きな人ならアリかも」というレビューもあり、確かにPCゲーではない感はある。課金要素はない。
・武器生産の工業力的なポイントがゲームシステム的に死んでいる。武器生産時に使用するけれど、よほど武器生産特化の投資をしない限り枯渇することがない。有効活用の道がアプデで追加されるかもしれない。
・クソ日本語訳
・クソ不親切なチュートリアル

ここまで踏まえた上で総評としては、今後に期待止まり。当初はこのゲームをおすすめするつもりで記事を書いてきたが、色々感想を述べていくうちに現状ではとても人様にお勧めできる内容ではない(≠クソゲー)と思い始めたので、こんな曖昧な評価になってしまいました……ごめんなさい(またアプデの内容を適宜追記していきます)
 
------------------------------------------------12月18日追記------------------------------------------------

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277ターン目になんとか連邦準備制度を完成させて勝利。てっきり難易度ビギナーだと思ってましたが、ミディアムでやってたようです……やけに難しいと思ったらそういう?200ターン目辺りからはInfluenceを一切外交に使わず連邦準備制度に費やし、資金繰りも貸し付け事業一本、武器も売って必要品の購入に充てていました…IMF株式は終盤ほどシェアのパーセンテージが高まっていくようなので逆転も可能みたいです。破産に関してですが、ターン終了時にManagerの給料や物件維持費を支払ってなお赤字になる場合にのみ、破産となるようです。要するにキャッシュフローをある程度確保しておけば破産の心配はなさそう。