北海の砂島より

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ソープ・ルポ 5万ドブ捨て編

あれは和歌山旅行後のこと。有史以来、旅行の締めはソープランドと相場が決まっているとばかりに帰路の途中立ち寄った人生3回目のソープにて、愚かな私は大金をはたいて大外れを引き、あまりにショッキングな出来事すぎて以後ルポを書くことができなくなった。まさにトラウマである。

その事の顛末を知るのは旅の同行者ただ1人。医者の彼曰く、この一件以後の私はPTSDそのものだそうだ。あの悪夢を思い出すだけで挙動がおかしくなり、動悸が激しくなる。

しかしいい加減それもルポとして供養し、次なるステップへ踏み出す時ではないか?失敗談も大事なネタの一つだろう。というわけで今回は血涙を流しながら筆を執っています。

 

もう2〜3年前のことになるので記憶が若干あやふやな点はご了承願いたい。

いつもの同行者と適当に思いついて適当に敢行された和歌山2泊3日旅は滞りなく終了し、同行者は諸用で大阪の方へ、自分は南海フェリーで四国へと帰路を急いだ。有史以来(中略)相場が決まっているとはいえ、大阪尼崎神戸を避けた時点で自分に残された風俗の選択肢は地元の歓楽街だった。さまざまな身バレリスクが考えられたが、もう我慢できなかったのであろう。イくことにした男の決意は固く、天地がひっくり返ろうとも覆ることはない。

 

当時の自分はとにかく授乳手コキに凝っていた。ゆえに可動域の大きい巨乳でないと成人男性の授乳の体勢は厳しいなと冷静に分析していたので、下から2番目くらいの価格帯の店で一番の巨乳の子をチョイスして予約を入れた。一般的に格安な大衆店はガチャ要素が強く地雷を引いてもおかしくないと言われがちなのだが、自分はさまざまなルートで入念な下調べを行った末に毎回優良店を引いており、今回も大丈夫だろうと自信をみなぎらせて予約と相成った。

しかしプレイ1時間前の予約確認の電話では、相手方の声がこちらの南海フェリーの爆音でかき消されてまったく聞き取れず、どうも「コースに上乗せ料金で云々カンヌン~」という話をされていたようなのだが、ムラムラしすぎて正常な思考ができなくなった状態では早く電話を切りたくてしょうがないのでパパッと適当な返事をしてしまった。その適当な返事が後に災厄となって自分に降りかかってくるとは露知らず…。

 

港から車を走らせ着いたのは徳島市内の鷹匠町・栄町と呼ばれる歓楽街エリア。地元民ながら実はこちらに来ることがほぼないため全然知らなかったのだが意外と徳島にもソープランド街があり、レベルはどうあれ寂れた地方都市で生き残っているというのはやはり何物にも替えがたい価値がある。

適当なパーキングに停め、まずは様子見とばかりに散策を始める。昭和の残り香が漂う町並みに、午前中だというのにたしかに水商売系の人々がちらほらと行き交う。旅行帰りのよそ者感満載の自分は完全に浮いてるな~と思いつつ、アウェー感に気圧されながらも予約を入れた店へと歩を進める。

 

店の佇まいは新築風のアパートを改装したような感じで露骨ないかがわしさはなく、しかし大きな看板とR18のロゴが掲げられており一目でその手の店だなというのが判るようになっている。しかしいかんせん奥の玄関へと続くエントランスが薄暗く、若干躊躇しつつも意を決して恐る恐る入っていくと、20代前半くらいのシュッとしたスーツ姿の好青年が出てきた。

風俗のボーイさんにも色々いらっしゃるだろうが、基本的に高齢な方か一見して裏稼業らしくイカツい感じの人が多いので、フレッシュな新卒かと見紛うほどの若い人間が出てくると拍子抜けどころではない。呆気にとられていると奥へどうぞどうぞと誘導され、嬢のパネルが壁一面に並べられたカウンター前に立ち、予約の確認をする。しかしここで事件発生。

自分が予約していたのは27,000円の85分コースだったのだが訪れたのが年末も年末ということで「正月料金が上乗せされます」と言い渡され、まずそこで料金3万円に。さらにはそこから非常にしつこいオプション交渉が始まった。自分としては予約していたプレイ内容で十分すぎたのに、「この娘はサービスが極上ですよ」だの「こちらからは内容を申し上げにくいのですが、100分も可能でございます」だのあの手この手で追加料金を持ちかけてこられた。今にして思えば鴨がネギを背負ってやって来たように見えていたのだろう。毅然と断ればよいものを、性欲に支配され正常な判断能力を失っている状態ではそうもいかず、追い打ちとばかりに先程の好青年ボーイとは別のガチムチ系危険な匂いがするボーイがふらりと奥から出てきて出口を固められ、「あ、これは逃げられない…」と悟った時にはもう遅かった。

油断していた。初手好青年ボーイで警戒心を解き、その後奥で骨の髄まで搾り取るシステムだったか……!

冷や汗と我慢汁が同時に出ていた気がする。長いようで短い逡巡の末、ええいままよと、諭吉5枚を差し出してついに待合室へと通される。そうでもしない限り出られないような気がした(金払ってるしたぶん普通に帰れる)。しかし、未だにあんな大金を一時の快楽で浪費した自分が信じられない。

待合室には杖に両手を重ねた80代くらいのお爺さんと、髪ボサボサのいかにも根暗な若者が二名座っていて、自分は長いソファーの片隅にちょこんと腰を下ろした。この場末感たるや筆舌に尽くし難し。若い男の方はまあわかるとして、ヨボヨボすぎる爺様がこんな店に来ているのがカルチャーショック過ぎてここでも呆気にとられる羽目になった。目的は入浴介助なのか、はたまた性欲処理なのか。そもそも勃つのか。相手をする嬢はどんな人なのか。嬢はどんな気持ちで自分の祖父世代にあたる男の相手をするのか。何もかもが気になりすぎるし、この4畳半に高齢化極まった地方の暗部がこれでもかと凝縮されているなあと感じた。しかし、誰が風俗に行こうと人の勝手である。自分も他人事ではなく、もしかしたら年老いてなお風俗に通っているかもしれない。老人笑うな行く道だ。

 

とはいえ、(本当にこれでよかったのか…?)という自問自答は待合室でも続く。なにせ5万である。せいぜい大衆店で高級店クラスの料金を払ってどんなサービスが受けられるというのか、もう不安でしかたない。

結論から申し上げると、サービスは非常に良かった。女は愛嬌さえよければモテモテ、これは間違いない。塩対応の嬢を何回か経験して思うのはホスピタリティのありがたさです。なぜ金を払っておいてこんな雑な対応を受けてるんだ?という惨めな回が一度でもあると、配慮の行き届いた接客をされるだけで幸せになれるというものです。たとえ自分好みの女性ではなかったとしても。

 

ボーイの「ご案内です〜」という声掛けのあと、森公◯子さんに似たふくよかな方がエレベーターで出迎えてくれた場面を境に、ぷつりと自分の記憶は途絶えています。言うまでもなく防衛機制が働いています。

一応、そこで人生初マットプレイを体験したことはなんとなく覚えています。嬢曰く師匠直伝の講習を受けてスキルを磨いているとのことで確かに気持ちよかったのですが、なにせ視界に飛び込んでくるのが全裸の森公◯子さん。かなり面食いのきらいがある自分が興奮するわけもなく、否応なく刷り込まれる快感とそれを脳が一切認めない地獄の時間が無限に続くかのようでした。意識飛び飛びでしたから、絶対何回か気を失ってるはずです。そして終いにはマットの上で無理やり刺激されて半勃ち状態の愚息から「もう終わらせてくれ」と言わんばかりに白い涙が零れ落ちたことをここに告白いたします。

人体って凄い。ほとんど勃起してなくても射精はできるんですね。そして不本意な射精も存在するのですね。不本意な射精ってなんなんだよマジで、経験する必要ないだろ!と怒りすら湧いてくる。情けなさと恥ずかしさで自分は、寂れた歓楽街の薄暗い一室で涙が溢れて止まりませんでした。オロオロとしながらも慰めの言葉をかけてくれる森公◯子さん、あなたは悪くない。でも言わせて欲しい、こんな思いをするために生きてきたわけではない。こんなことに5万円を費やす人間になってしまって、もう嫁に行けないわ私。いやソープ・ルポ・ライターの時点で親に顔向けできないか…。

 

あれから(悪い意味で)魂を抜かれた自分は、嬢に機械的な感謝を述べつつ、残り時間をたっぷりと残して早々に退店。強姦されるってこんな感じなのかな、とあまりにも失礼過ぎる感想を抱いて帰路に着いたのを妙に覚えています。

「毒は薬にもなる。もう風俗に行くことはないな」

嘘ですあれから5回くらいは行ってます、今のところ…。